風のまち・苫前町の風力発電
風力発電にいたるまでの苫前の物語
厄介者の「風」を逆転の発想で活用
厄介者の「風」を凧あげあそびに
苫前町は、北海道の北西部、留萌地方海岸線の中央部に位置し、道内屈指の「強風地帯」です。とくに11月から3月にかけては、地吹雪といわれる地面から殴りつけるような「風」が毎日のように吹き荒れ、町民は屋内に閉じ込められがちな生活を余儀なくされます。町民にとってこの「風」は、まさに地域の「厄介者」でした。しかし、1974年頃から町民の意識に変化が起きます。風の強い日に「凧あげ」でもして楽しもうという声が町民のあいだに持ちあがったのです。
津軽凧を持ち込んだ「やん衆」
凧あげ大会のポスター
なぜ風力発電なのか
はじめに着手したこと
厄介者の「風」を、今度は「遊びではなく、もう少し身になるものはないか」という声が持ちあがり、「風力発電はどうだろう」ということになりました。そのころは、まだ国内での風力発電はあまり評価されていませんでした。風の強さに合った風車を回転させる技術がない状態だったのです。山形県立川町では、外国製の風車を導入して100キロワットと小規模ながらすでに発電をおこなっていました。それなら苫前町でも有望だということになり、私たちが強いと感じている「風」が、実際にはどれくらいの量なのかを調査したいと関係機関に要望しました。その結果、1995年に、通産省の「地域新エネルギービジョン策定事業」として町内2カ所で、翌年には通産省の外郭団体であるNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の風力発電フィールドテスト事業として近くのグリーンヒルキャンプ場で風況調査をおこない、1年間の月別による風向、風速のデータを得ました。その結果、苫前町は風力発電にきわめて有効な地域であることが実証されたのです。
商業用風力発電所を建設する3つの要素
夕陽ヶ丘ウインドファーム「風来望」
夕陽ヶ丘ウインドファーム〜風来望
【リプレース】
苫前町では、豊浦地区に建設した苫前夕陽ヶ丘風力発電所風力発電機3基が設置から20年を経過し、機器の老朽化及び対応年数を経過していることから、令和元年(2019年)7月をもって運転を終了しました。
町は、安定的な運営が図られると判断したため、風車のリプレース(建て替え)を決定し、建設工事を進める中、令和2年(2020年)3月に風車4号機の運転を開始しました。
本格的な民間企業による風力発電施設
自然と共生「苫前グリーンヒルウインドパーク」
ユーラス苫前ウインドファーム
風力発電の仕組み
回転はつねに右回り
風車の軸部分のナセル(発電部)には風向計と風速計がついていて、風の方向、風の強さをセンサーで感知し、風が変われば羽根は回転して風の主方向に真っ直ぐに向きます。これがアップウインドタイプといわれるものです。回転はつねに右回りで、羽根の角度が固定のストールタイプと角度が変動するピッチタイプとに大別されます。ナセルには大発電機と小発電機が入っています。風の弱いときに大きな発電機を動かそうとすれば負荷が大きいため、最初は小さな発電機を動かします。ボーナス社製の風車の場合は、1分間に15回転します。そして、ある程度出力が上がってくると大発電機に移行します。この場合の回転数は22回転になります。なぜこれくらいの回転数で発電できるかといえば、ナセルの中に回転数を約60倍に高める増速機が付いているためです。つまり、15回転の60倍なら1,000回転、22回転なら1,500回転になるというシステムです。また、風車は風速3mになると自動的に運転を開始し、風速25mになると強制的に停止し、風車は常にこの幅の中で運転されています。
新エネルギーの開発
クリーンエネルギーの先進地